法人営業における新規のアプローチは、契約締結までの成否を決める重要なステップですが、多くの営業担当者が効果的な手法を把握できていないのが現状で、苦労するケースが多くあります。
本記事では、過去の営業経験をもとに、アプローチ成功率を3倍に高める具体的な手法を15個ご紹介します。特に、メールや電話での初回アプローチの具体的な方法、LinkedInやSalesforceなどのツール活用法、そして決裁権者へのアプローチ戦略まで、実践的なノウハウを詳しく解説します。
さらに、よくあるNG事例も紹介することで、新人からベテランの方まで即実践可能な形でまとめています。また過去に営業現場の他の課題についても記事にしていますので、こちらも併せてご確認ください。
1. 法人営業で効果的なアプローチとは
法人営業におけるアプローチとは、見込み顧客となる企業に対して初めてコンタクトを取り、商談や提案の機会を得るための重要なプロセスです。近年のビジネス環境では、従来の飛び込み営業が難しくなり、デジタルツールを活用した多様なアプローチ方法が求められています。
効果的なアプローチを実現するためには、ターゲット企業の課題を的確に把握し、自社のソリューションがどのように役立つかを明確に伝えることが重要です。また、意思決定者へ確実にリーチできる手段を選択することで、商談成約率を大きく向上させることができます。
1.1 なぜ法人営業のアプローチが重要なのか
法人営業において、アプローチの成否は商談全体の成果を大きく左右します。その理由として、以下の3つが挙げられます。
第一に、企業の購買担当者は日々多くの営業からアプローチを受けており、最初の接点で相手の興味を引けなければ、その後の商談機会すら得られません。特に、大手企業の購買担当者は相当量の営業アプローチを受けている状況ですので、何をどう伝えていくかはとても重要になります。
第二に、初回アプローチでの印象が、その後の商談プロセス全体に影響を与えます。特に、提案内容の準備度合いや課題理解の深さ、業界への理解や実績などは、見込み顧客との信頼関係構築に直結します。
第三に、効果的なアプローチは営業活動の効率化にもつながります。適切なターゲティングと準備に基づいたアプローチを行うことで、見込み顧客の質を高め、商談成約までの時間短縮と精度の向上が可能となります。
1.2 アプローチから商談までの基本的な流れ
法人営業における基本的なアプローチから商談までの流れは、以下の5つのステップで構成されます。
1. 事前準備:ターゲット企業のリサーチや提案内容の準備を行います。具体的には、企業の業績データや決算情報、プレスリリース、採用情報などから、経営課題や将来の方向性を分析します。
2. 初回コンタクト:電話、メール、WEBなど、最適なチャネルを選択して最初の接触を図ります。この際、相手企業の規模や業界特性に応じて、適切なアプローチ方法を選択することが重要です。
3. アポイント設定:初回コンタクトで興味を持っていただいた場合、具体的な商談の日程調整を行います。できるだけ決裁権のある方との面談を設定できるよう、工夫が必要です。
4. 提案準備:アポイントが決まったら、より詳細な提案内容の準備に入ります。企業の具体的な課題に対する解決策を、数値やデータを交えて準備します。
5. 商談実施:実際の商談では、事前準備に基づいた具体的な提案を行い、次のステップにつなげます。初回商談では、相手企業の詳細なニーズヒアリングも重要な要素となります。
このような流れを意識しながら、各ステップで必要な準備と実行を確実に行うことで、効果的なアプローチが実現できます。特に大手企業への営業では、商談機会を得るまでに複数回のアプローチが必要となることも多く、粘り強い取り組みが求められます。
2. 事前準備で成功率を高める法人営業のアプローチ5選
法人営業における事前準備は、商談の成功率を大きく左右する重要な要素です。ここでは、具体的な準備のポイントを5つご紹介します。
2.1 ターゲット企業の徹底リサーチ
営業活動を始める前に、ターゲット企業について情報収集を行うことが重要です。企業の公式サイト、IR情報、プレスリリース、業界ニュースなど公開されている情報はもちろんのこと、公開情報が少ない場合は、調査会社のレポートなど有償のサービスを利用することも検討が必要になります。
- 企業規模(売上高、従業員数)
- 事業内容と主力商品・サービス
- 経営課題や今後の展開方針
- 投資の方向性や内容
- 競合他社との関係性
- 最近のトピックスや新規事業の動向
2.2 LinkedIn・Facebookを活用した企業分析
ビジネスSNSを活用することで、より詳細な企業情報や人材情報を入手することができます。LinkedInでは経営者や従業員のキャリア履歴、Facebookでは企業活動に関する情報を確認できます。
- キーパーソンのプロフィールや経歴
- 企業の成長度合いや活動動向
- 社内の雰囲気や価値観
- 取引先や協業企業との関係性
2.3 決裁権者の特定と人物像の把握
商談を効率的に進めるためには、決裁権を持つ人物を特定し、その人物の特徴を理解することが重要です。以下のような情報を整理しましょう。
- 組織の全体像
- 役職と権限範囲
- 経歴や専門分野
- 過去の発言や著書、講演内容
- 社内での影響力や人脈
- 意思決定のスタイル
2.4 自社商材の強みの明確化
ターゲット企業の課題に対して、自社商材がどのように貢献できるかを具体的に整理します。以下のポイントを明確にしておきましょう。
- 導入による具体的なメリット
- コスト削減効果や業務効率化の数値
- 競合製品との差別化ポイント
- 業界での導入実績や成功事例
- アフターサポート体制
2.5 提案資料の事前準備
初回アプローチから商談までスムーズに進められるよう、必要な資料を事前に用意します。準備すべき資料には以下のようなものがあります。
- 会社案内資料
- 製品・サービスカタログ
- 導入事例集
- 概算の費用感
これらの資料は、ターゲット企業の業界や規模に合わせてカスタマイズできるよう、柔軟性を持たせた形で準備しておくことが重要です。
また企業分析をもとに、「お客様にもこんな課題があるだろう」と仮説を立て、その仮説に対して「自社製品がどうメリットを出せるか」の観点で話をすることが、今後に向けてもとても大事な要素になります。
3. 初回アプローチで成功する具体的な方法5選
初回アプローチは法人営業において最も重要な局面の一つです。初回の印象で今後の商談の成否が大きく左右されるため、慎重に準備を進める必要があります。ここでは、成果を上げている営業マンが実践している5つの具体的なアプローチ方法をご紹介します。
3.1 メールでのアプローチ手法
ールでのアプローチは、相手の都合を妨げることなく情報を届けられる効果的な方法です。しかしながら、ビジネスパーソンの1日のメール受信数は平均100件以上と言われており、その中で開封され、返信を得るためには工夫が必要です。
件名は35文字以内で、具体的な数字や期限を含めることで開封率が向上します。例えば「○○業界の課題解決事例│売上120%増を実現した方法を共有」といった具体的な実績を示す件名が効果的です。
本文は3段落構成が基本です。1段落目で相手企業の課題に言及し、2段落目で解決策を提示、3段落目でアクションを促します。「御社の○○という課題について、当社では△△という方法で解決できる可能性があります」といった具体的な価値提案を含めることが重要になります。
3.2 電話でのアプローチ手法
電話は即時的なコミュニケーションが可能で、相手の反応を直接確認できる利点があります。大手企業では担当者につないでくれないケースも多いですが、特に中小企業へのアプローチでは、電話が最も効果的なケースが多くあります。
アポイント獲得のために、事前にスクリプトを用意しておきます。例えば、「お忙しいところ失礼いたします。○○会社の△△でございます。実は、同業他社様で□□という課題を解決させていただいた事例がございまして…」という具体的な価値を示す導入から始めることで、相手の興味を引くことができます。
またよくある質問への対応方法も、具体的に決めておく必要があります。例えば、「資料を送ってください」「検討中です」といった返答に対して、「具体的な事例を交えながら15分程度でご説明させていただければ」など、次のアクションにつながる提案を準備しておくことが重要です。
3.4 展示会でのアプローチ手法
業界向けのビジネス展示会は、興味関心の高い見込み客と直接対話できる貴重な機会です。普段は簡単に会えない会社と、面識が持てるチャンスにもなります。ブースでは「御社では○○という課題はございませんか?」という具体的な問いかけから会話を始めることで、効果的なアプローチが可能です。
多くの来場者は、通りすがりの短い時間で会話することになるため、サービスのメリット、解決できる課題など、必要な情報を短時間で伝えて、興味の有無を確認できるように準備が必要になります。
3.5 SNSを活用したアプローチ手法
最近では、LinkedInやFacebookなどのビジネスSNSを活用したアプローチも効果的です。特にLinkedInでは、相手の職歴や興味関心を確認できるため、パーソナライズされたメッセージを送ることができます。投稿やコメントでの交流を重ねてから、ダイレクトメッセージでアプローチするのが望ましいでしょう。
4. フォローアップで差をつける方法5選
初回アプローチの後にも、今後につなげるためにフォローアップが必要になります。ここではフォローアップにおける、5つの実践方法をご紹介します。
4.1 タイミングを逃さない追客方法
営業活動において、最初のアプローチ後のフォローアップはとても重要です。特に初回商談後の1週間が最も重要な期間となります。この期間中に適切なフォローができるかどうかで、商談の成約率が大きく変わってきます。
具体的なフォローアップのタイミングとしては、商談直後~3日後が基本となります。商談直後には議事録やお礼メールを送付し、3日後には追加資料の送付や確認事項の問い合わせ、次回アポイントの調整を行うのが効果的です。
4.2 営業日報を活用した進捗管理
効果的なフォローアップを実現するためには、営業日報での進捗管理が不可欠です。特に商談内容、クライアントの反応、宿題事項、次回アクションなどを詳細に記録することで、組織的な営業活動が可能となります。
営業日報には、商談日時、面談者、商談内容、クライアントのニーズ、競合情報、次回アクション、見込み度などを必ず記入します。これにより、上司からの適切なアドバイスを得られるだけでなく、チーム内での情報共有も円滑になります。
4.3 Salesforceなどのツール活用法
現代の営業活動において、SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)ツールの活用は必須となっています。Salesforce、HubSpot、kintoneなどの営業支援ツールを活用することで、商談の進捗管理や顧客情報の一元管理が可能になります。
支援ツールは目的や、導入する会社の規模に合わせて、様々な選択肢があります。自社に適切なツールは何かを、情報を整理しながら見極めていく必要があります。
4.4 提案内容のブラッシュアップ
初回商談での提案内容に対するフィードバックを基に、提案内容を継続的にブラッシュアップすることが重要です。クライアントから得られた情報や懸念事項を反映し、より具体的で実現可能な提案へと進化させていきます。
提案書のブラッシュアップにおいては、価格設定の見直し、導入スケジュールの調整、ROIの具体的な数値提示など、クライアントの決裁を促進する要素を重点的に強化していきます。また、競合他社との差別化ポイントも明確に示していくことが重要になります。
4.5 社内リソースの有効活用
大型案件や複雑な提案では、営業担当者一人での対応には限界があります。そのため、社内の様々なリソースを効果的に活用することが重要です。技術担当者、カスタマーサクセス担当者、マーケティング担当者など、各専門家の知見を積極的に取り入れることで、提案の質を高めることができます。
具体的には、技術担当者による製品デモの実施、カスタマーサクセス担当者による導入事例の紹介、マーケティング担当者による市場動向の分析など、それぞれの専門性を活かした支援を受けることで、商談の成約率を高めることができます。また、過去の成功事例やノウハウを社内で共有し、組織全体の営業力向上につなげることも重要です。
5. 法人営業のアプローチでよくあるNG事例
法人営業のアプローチにおいて、成果を上げられない営業担当者には共通した特徴があるように思います。ここでは、特に注意すべき代表的なNG事例を解説し、その対策方法についても具体的に説明していきます。
5.1 押しつけがましい売り込み
最も典型的なNG事例が、自社製品やサービスの一方的な売り込み/紹介です。特に初回アプローチの段階で、相手のニーズを把握せずに商品説明を一方的に行うケースが多く見られます。
例えば、「弊社の商品は〇〇の機能があります」といった説明の押し付けや、「いかがでしたか?」といった感想の強要、「では、どういったものをお探しですか?」といった安易な課題感の収集など、相手企業のことを考えないアプローチや質問の数々は、お客様との信頼関係構築を妨げる要因となります。
代わりに、「御社における○○の課題について、お話を伺えればと存じます」というように、相手企業の状況把握を優先する姿勢が重要です。
5.2 提案内容の準備不足
アプローチ前の事前準備が不十分なまま商談に臨むケースも散見されます。特に以下のような準備不足は、商談の成功確率を大きく下げる要因となります。
- 相手企業の業界動向の把握不足
- 決裁権者や組織体制の理解不足
- 競合他社との差別化ポイントの整理不足
- 想定される質問への回答準備不足
- 提案資料の完成度不足
例えば、「日経ビジネス」や「東洋経済オンライン」などの業界メディアで最新動向をキャッチアップし、「IR情報」などの公開情報情報を確認するなど、当たり前のことを当たり前に行っておく必要があります。
仮説でもお客様のことをイメージして作られた提案には、お客様も意見を言ってくれることが多く、その後の提案につながる確率も多くなります。
5.3 フォローアップの遅れ
初回アプローチ後のフォローアップが遅れることで、せっかくの商談機会を逃してしまうケースも多く発生しています。具体的には次のような状況が該当します。
- 資料送付後の確認連絡が3営業日以上遅れる
- 相手からの質問メールへの返信が翌営業日を超える
- 商談後の議事録送付が1週間以上かかる
- 情報提供などの約束の期日を過ぎる
特に大手企業との商談では、社内での検討材料として迅速な情報提供が求められます。グループウェアや情報管理ツールも活用しながら、タスク管理を徹底することで、このような遅れを防ぐことができます。
また、フォローアップの遅れは商談の優先順位付けの甘さにも起因します。お客様の反応をもって、次はいつ、だれが、どんなアプローチをするのかなど、適切なフォロー計画を立てることが必要です。
これらのNG事例を回避するためには、社内での定期的な事例共有や、ロールプレイング研修の実施が効果的です。失敗事例を組織の知見として蓄積し、新人営業担当者の育成にも活用することで、組織全体の営業力向上につながります。
6. まとめ
法人営業のアプローチでは、事前準備から初回アプローチ、フォローアップまでの一連の流れを、手を抜くことなくコツコツと確実に実行することが成約率を高める重要なポイントとなります。一方で、準備不足のまま闇雲にアプローチをかけたり、過度な売り込みを行ったりすることは、商談の機会を失うリスクにつながります。
決裁権者の特定や、仮説に基づく提案資料の準備、そして適切なタイミングでのフォローアップを行うことで、初回商談からの成約率は大きく向上します。必要な要素を組み合わせ、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善を図ることで、法人営業の成果を最大化することができます。
初回の営業アプローチは、その営業パーソンでも試行錯誤を繰り返しながら、徐々にレベルを上げていくしかない領域だと思います。逆を返せば、コツコツと振り返りと改善を重ねていけば、確実にレベルアップできる領域でもあり、他の人との差別化になる部分だとも考えています。
なかなか結果が出なくて苦しむこともあるかもしれませんが、愚直に続けて大きな成果をものにして下さい。