法人営業の新規開拓は、多くの企業にとって重要なテーマですが、思うように成果が出ず悩む担当者も少なくありません。

成功の鍵は、闇雲なアプローチではなく、ターゲットを明確にした上で複数の手法を組み合わせ、データに基づき改善を続けることです。

本記事では、新規開拓が難しい理由から、具体的な準備、手法一覧、成功のコツまでを徹底解説。明日から使える実践的な知識が身につきます。

1. 法人営業の新規開拓が重要視される背景

市場の成熟化や競争の激化が進む現代において、多くの企業が持続的な成長を遂げるために法人営業の新規開拓に力を入れています。既存顧客との関係維持もさることながら、事業を拡大し、安定した収益基盤を築く上で、新たな顧客との接点を創出する活動は不可欠です。

しかし、なぜ今、これほどまでに新規開拓が重要視されるのでしょうか。そこには、現代のビジネス環境が抱える構造的な課題が深く関わっています。

1.1 新規開拓営業とは?

新規開拓営業とは、これまで一切の取引関係がなかった企業に対してアプローチを行い、自社の製品やサービスを新たに導入してもらうための一連の営業活動を指します。いわば、顧客リストの「0」を「1」にするための活動であり、企業の成長エンジンとも言える重要な役割を担っています。

特定の顧客を定期的に訪問し、追加の受注やアップセルを目指す「ルート営業」とは対照的に、全く接点のない状態から信頼関係を構築し、商談機会を創出し、最終的に契約へと結びつけるスキルが求められます。

1.2 新規開拓が難しいと言われる3つの理由

多くの営業担当者が、新規開拓に対して「難しい」「精神的にきつい」といったイメージを抱いています。実際に、新規開拓はルート営業と比較して成功率が低く、多くの困難が伴います。

その主な理由として、次の3つが挙げられます。私の感覚ではトレーニングと似ていて、いきなり大量にやろうと思うと辛いですし効果も出ません。少しづつでも毎日続けていれば、いつか習慣化して苦労に感じることが減ってきます。

理由1:信頼関係がゼロからのスタートであること
新規開拓の最大の壁は、相手企業との間に信頼関係が全くない点です。面識のない企業からの突然の連絡は、多くの場合、警戒心をもって受け止められます。

担当者にたどり着く前に受付で断られたり、メールを開封すらしてもらえなかったりすることも少なくありません。製品やサービスの価値を伝える以前に、まずは「話を聞いてもらう」という最初のハードルを越えるために、多大な労力と工夫が必要となります。

理由2:相手の課題やニーズが不明確であること
既存顧客であれば、これまでの取引履歴から相手の事業内容や課題をある程度把握できます。しかし、新規開拓の場合は、相手がどのような課題を抱えているのか、自社のサービスが本当に役立つのかといった情報がほとんどありません。

そのため、業界の動向や企業情報から仮説を立ててアプローチする必要がありますが、その仮説が的外れであれば、相手の関心を引くことはできず、貴重なアプローチ機会を失うことになります。

理由3:成果が出るまでに時間とコストがかかること
新規開拓は、アプローチを開始してから実際に受注に至るまでの期間が長くなる傾向があります。数多くの企業にアプローチしても、商談につながるのはごく一部であり、さらにそこから契約に至る割合はもっと低くなります。

成果が見えにくい中で活動を続ける必要があり、営業担当者のモチベーション維持が難しいという課題もあります。また、リスト作成やアプローチにかかる人件費、ツールの利用料など、目に見える成果が出るまでコストが先行するため、企業にとっては投資的な側面が強い活動と言えるでしょう。

2. 法人営業の新規開拓を始める前にすべき3つの準備

法人営業の新規開拓は、やみくもにアプローチしても時間と労力がかかるだけで、なかなか成果には結びつきません。とりあえず何でもいいからやってみようと動き出すことも大事ですが、非効率な活動は営業担当者の疲弊を招き、組織全体の士気低下にもつながりかねません。

成果を最大化するためには、本格的に活動を開始する前の「準備」が極めて重要です。ここでは、新規開拓を成功に導くために不可欠な3つの準備について、具体的なステップとともに解説します。

2.1 準備1 ターゲット企業(アプローチ先)を明確にする

新規開拓における最初のステップは、「誰にアプローチするのか」を明確に定義することです。ターゲットが曖昧なままでは、営業メッセージは誰にも響かず、限られたリソースが分散してしまいます。

自社の製品やサービスを最も必要とし、最も価値を感じてくれる企業に狙いを定めることで、アプローチの精度と成約率を飛躍的に高めることができます。

2.1.1 ICP(理想の顧客像)の設定

まず設定すべきなのが、ICP(Ideal Customer Profile:理想の顧客像)です。ICPとは、BtoCでのペルソナと同様で、単なるターゲット顧客ではなく、自社にとって最も価値が高く、長期的に良好な関係を築ける理想的な企業像を指します。LTV(顧客生涯価値)が高い優良顧客となりうる企業はどのような特徴を持っているのかを定義します。

ICPの設定は、既存の優良顧客を分析することから始めます。契約期間が長い、アップセルやクロスセルに応じてくれる、利益率が高いといった顧客の共通点を、定量的・定性的な側面から洗い出しましょう。

【分析する項目の例】

  • 定量的データ:業種、業界、企業規模(従業員数、売上高)、所在地、設立年数、導入している技術など
  • 定性的データ:抱えていた課題、導入の決め手、担当者の役職、企業文化、将来のビジョンなど

これらの分析結果をもとに、「従業員数100名以上500名未満の製造業で、首都圏に本社を置き、生産管理システムの老朽化に課題を感じている企業」のように、解像度の高い具体的なICPを言語化します。明確なICPは、後の営業リスト作成やアプローチ手法選定のブレない指針となります。

2.1.2 質の高い営業リストの作成方法

ICPが定まったら、次はその条件に合致する企業のリストを作成します。リストの「質」は、新規開拓の成果を直接的に左右します。

情報が古かったり、そもそもターゲットから外れていたりするリストでは、どれだけアプローチしても無駄撃ちに終わってしまいます。質の高いリストを作成するには、主に次のような方法があります。

  • 企業データベースの活用:「ユーソナー(uSonar)」といった企業情報データベースを活用する方法です。業種や企業規模、所在地などの詳細な条件で企業を抽出し、効率的にICPに合致したリストを作成できます。多くのサービスでは、決裁者情報や企業の最新ニュースなども取得可能です。
  • Web上からの情報収集:プレスリリース配信サイトや業界ニュース、求人情報サイトなどから、特定の動きを見せている企業を探す方法です。例えば、「DX推進担当」の求人を出している企業は、関連するITツールへの関心が高いと推測できます。手間はかかりますが、鮮度の高い、営業の切り口となる情報を得やすいのがメリットです。
  • リスト購入:リスト作成会社から企業リストを購入する方法もあります。手軽に大量のリストを入手できますが、情報の鮮度や正確性には注意が必要です。購入する際は、リストの更新頻度やデータソースを確認することが重要です。

これらの方法を組み合わせ、常に最新かつ正確な情報に基づいた、質の高い営業リストを構築・維持することが成功の鍵となります。

2.2 準備2 自社の強みと提供価値を再定義する

アプローチ先が決まったら、次に「何を伝えるか」を明確にします。自社の製品やサービスの機能・特徴を「こんなことできます」とただ羅列するだけでは、多忙な担当者の心には響きません。

重要なのは、競合他社と比較した上での自社の「強み」を理解し、それをターゲット企業の「課題解決」に結びつく「提供価値(バリュープロポジション)」として再定義することです。特に信頼関係が薄い相手へ伝わるわけですので、利益をシンプルに伝えていがないと、興味を持ってくれることは少なくなります。

このプロセスで役立つのが「3C分析」というフレームワークです。また顧客の顧客(Customers Customer)や顧客の競合(Customers Competitor)も分析していくと、顧客の状況を深く理解することができます。

  • 顧客(Customer):ICPで設定したターゲット企業が抱える具体的な課題、ニーズ、痛み(ペイン)は何かを深く理解します。
  • 競合(Competitor):競合他社は、その課題に対してどのような解決策を提示しているか、その強みと弱みは何かを調査します。
  • 自社(Company):自社の製品・サービスが、競合には提供できず、顧客の課題を解決できる独自の強みは何かを客観的に分析します。

この3つの視点から分析することで、「競合には真似できず、顧客が本当に求めている、自社ならではの提供価値」が明確になります。

例えば、「弊社の〇〇という機能は、競合製品より初期設定が簡単で、IT専門部署がない中小企業でも導入後すぐに△△業務の工数を30%削減できます」のように、具体的な便益(ベネフィット)として言語化することが重要です。

この提供価値が、今後の営業メールや提案資料など、あらゆるコミュニケーションの核となります。

2.3 準備3 KGIとKPIを設定し目標を具体化する

最後に、新規開拓活動全体の進捗を測り、改善を促すための具体的な目標を設定します。感覚的に活動を進めるのではなく、データに基づいた客観的な指標を置くことで、チーム全体の目線が合い、戦略的な活動が可能になります。

目標設定では、「とにかく頑張る」ということになりがちですが、何をどの程度対応したら頑張ったことになるのかを決めておかないと、早々に認識の齟齬が起こってしまいます。

ここでは最終目標である「KGI」と、それを達成するための中間指標である「KPI」をセットで設定します。

  • KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標):活動の最終的なゴールを示す指標です。「半期での新規契約による売上高1,000万円」「四半期での新規受注件数30件」など、事業成果に直結する具体的な数値を設定します。
  • KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標):KGIを達成するためのプロセスを分解し、各活動の達成度を測る指標です。KGIから逆算して設定することがポイントです。

例えば、KGIが「月間5件の新規受注」で、過去のデータから商談からの受注率が25%、アポイントからの商談化率が50%だとします。この場合、必要なKPIは以下のように算出できます。

  • 必要な商談数:5件 ÷ 25% = 20件
  • 必要なアポイント数:20件 ÷ 50% = 40件

この場合、「月間のアポイント獲得数40件」や「月間の商談実施数20件」が具体的なKPIとなります。さらに、テレアポのアポ獲得率が2%なら「月間2,000件の架電数」という行動レベルのKPIも設定できます。

このようにKPIを設定することで、日々の活動が目標達成にどう貢献しているかが明確になり、進捗が芳しくない場合はどのプロセスに問題があるのかを特定しやすくなります。

またKPIが現実的な数値でない場合、体制を検討するのか、数値を変更するかなど、建設的な議論が可能になります。

3. 【手法一覧】法人営業における新規開拓のアプローチ方法

法人営業の新規開拓には、多種多様なアプローチ方法が存在します。自社の商材やターゲット、リソースに合わせて最適な手法を選択・組み合わせることが成功への鍵となります。

ここでは、代表的なアプローチ方法を「アウトバウンド型」「インバウンド型」「その他」の3つのカテゴリーに分けて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。

3.1 アウトバウンド型(プッシュ型)の新規開拓アプローチ

アウトバウンド型とは、企業側からターゲット顧客に対して能動的にアプローチを仕掛ける手法です。プッシュ型とも呼ばれ、短期間で成果を求めたい場合に有効です。

一方で、相手のタイミングを考慮しないアプローチは、ネガティブな印象を与えかねないため注意が必要です。

3.1.1 飛び込み営業

飛び込み営業は、事前のアポイントメントなしに直接企業を訪問する、古くからある営業手法です。担当者と直接対面できるため、熱意が伝わりやすいというメリットがありますが、現代においては効率が非常に悪い手法とされています。

受付で断られたり、担当者不在であったりするケースが多く、セキュリティ意識の高まりから、多くの企業で歓迎されません。実施する際は、最低限の企業リサーチを行い、訪問の目的を簡潔に伝えられるように準備しておくことが不可欠です。

3.1.2 テレアポ

テレアポ(テレフォンアポインター)は、電話を用いてターゲット企業にアプローチし、商談のアポイントを獲得する手法です。移動時間がかからず、短時間で多くの企業に接触できる効率の良さがメリットです。

しかし、担当者に繋がりにくい「受付ブロック」や、話を聞いてもらえずにすぐに電話を切られてしまうことも多く、営業担当者の精神的な負担が大きいというデメリットがあります。

成功のコツは、相手のメリットを簡潔に伝えるトークスクリプトの準備や、どんな担当者へつないでほしいのかを明確にすることです。

3.1.3 フォーム営業

企業のウェブサイトに設置されている「お問い合わせフォーム」を活用してメッセージを送り、アプローチする手法です。電話と異なり、担当者が都合の良いタイミングで内容を確認できるため、比較的受け入れられやすい傾向にあります。また、文章でアプローチするため、伝えたい内容を正確に届けられる点もメリットです。

ただし、多くの企業が同様のアプローチを行っているため、定型文では埋もれてしまいます。また明らかにターゲットが違う、文面がコピーしたものなど、手間を惜しんだ対応ではなかなか成果につながりません。

相手企業の事業内容や課題をリサーチした上で、なぜ連絡したのかを具体的に記載するなど、パーソナライズされた内容を送ることが成果に繋がります。

3.1.4 営業メール

ターゲット企業の担当者個人のメールアドレス宛に、直接アプローチメールを送る手法です。フォーム営業と同様に、相手のタイミングで読んでもらえる点や、PDFなどの資料を添付できる点がメリットです。一方で、そもそもメールアドレスの入手が困難であったり、件名によっては開封されずに迷惑メールとして処理されたりするリスクもあります。

成功させるには、相手が思わず開封したくなるような魅力的な件名を考案し、本文は要点を絞って簡潔にまとめ、具体的な次のアクション(資料請求、Webサイトへの誘導など)を促すことが重要です。

3.1.5 手紙(DM)

ターゲット企業の決裁者など特定の個人宛に、手紙やパンフレットなどのダイレクトメールを郵送する手法です。デジタルコミュニケーションが主流の現代において、物理的な手紙はかえって新鮮で、開封率が高い傾向にあります。

特に、質の高いデザインのDMや、手書きのメッセージを添えることで、他社との差別化を図り、強い印象を残すことができます。また製造業など、在宅やテレワークが難しい業種では、会社にいる可能性も高くなるため、より有効に作用します。

デメリットは、印刷費や郵送費といったコストがかかる点と、効果測定が難しい点です。費用対効果を意識し、送付先を厳選して実施することが求められます。

3.1.6 ウェビナー・セミナー開催

自社で特定のテーマに関するウェビナー(オンラインセミナー)やセミナーを開催し、参加者に対してアプローチする手法です。自社の専門性やノウハウをアピールすることで、参加者の信頼を獲得しやすいという大きなメリットがあります。

参加者はそのテーマに課題意識を持っているため、質の高い見込み客リストを形成でき、その後の商談にも繋がりやすい傾向があります。またセミナー内容を録画して自社のホームページに掲載することで、オウンドメディアの強化や、リードの獲得に活用することもできます。

ただし、魅力的なテーマ設定や集客、当日の運営など、企画から実行までに多くの工数がかかる点がデメリットです。参加後のフォローアップ体制を事前に構築しておくことも成功の鍵となります。

3.2 インバウンド型(プル型)の新規開拓アプローチ

インバウンド型とは、顧客にとって有益な情報を発信することで、自社を見つけてもらい、興味・関心を持ってもらうことで引き寄せる(プル型)アプローチです。

中長期的な視点が必要ですが、顧客のロイヤリティを高めやすく、質の高い見込み客の獲得に繋がります。

3.2.1 オウンドメディア(コンテンツマーケティング)

自社で運営するブログやコラムサイト(オウンドメディア)で、ターゲット顧客の課題解決に繋がる有益な情報を発信する手法です。SEO(検索エンジン最適化)対策を行うことで、課題を抱えて情報収集している潜在顧客を、検索エンジン経由で集客します。

一度作成したコンテンツは企業の資産として蓄積され、継続的な集客効果が期待できる点が最大のメリットです。ただし、成果が出るまでには数ヶ月から1年以上の時間がかかる場合が多く、質の高いコンテンツを定期的に制作し続ける体制が必要です。

3.2.2 プレスリリース

新商品や新サービスの発表、業務提携、調査データなどをニュースとしてまとめ、メディア向けに配信する広報活動の一環です。テレビや新聞、Webメディアなどに取り上げられることで、広告費をかけずに大きな認知を獲得し、企業の社会的信頼性を高めることができます。

メディアに掲載されることで、想定していなかった企業から問い合わせが来ることもあります。ただし、必ず取り上げられる保証はなく、ニュースとしての新規性や社会性が求められるため、配信するネタを慎重に選ぶ必要があります。

3.2.3 WEB広告

GoogleやYahoo!などの検索エンジンに表示するリスティング広告や、SNS上に表示するSNS広告、Webサイトの広告枠に表示するディスプレイ広告などを活用する手法です。ターゲットの属性や地域、興味関心などを細かく設定して広告を配信できるため、狙った層にピンポイントでアプローチできます。

比較的短期間で成果が出やすく、効果測定をしながら改善しやすい点がメリットです。一方で、広告の出稿を止めると効果がなくなるため、継続的に費用が発生する点や、効果的な運用には専門的な知識が必要になる点がデメリットです。

3.2.4 SNS活用(LinkedInなど)

Facebook、X(旧Twitter)、ビジネス特化型のLinkedInといったソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用して情報発信を行い、見込み客との関係を構築する手法です。

企業のブランディングや、顧客との双方向のコミュニケーションを通じてファンを育成することに繋がります。特に法人営業においては、企業のキーパーソンと繋がりやすいLinkedInの活用が有効です。継続的な情報発信やコメントでの交流を通じて信頼関係を築き、自然な形で商談に繋げることが可能です。

ただし、継続的な運用リソースが必要な点と、不適切な発信による炎上リスクには注意が必要です。

3.2.5 ホワイトペーパー

業界の動向レポートや、特定の課題に対するノウハウをまとめたお役立ち資料(ホワイトペーパー)を作成し、Webサイトからダウンロードできるようにする手法です。ダウンロードの際に、企業名や氏名、連絡先などの情報を入力してもらうことで、質の高い見込み客リストを獲得します。

オウンドメディアやWeb広告と組み合わせることで、より効果を発揮します。課題意識が明確なユーザーからの情報提供が期待できる一方で、質の高いホワイトペーパーを作成するには専門知識と多くの工数がかかります。

3.3 その他の新規開拓アプローチ

アウトバウンド型、インバウンド型の枠には収まりきらないものの、法人営業の新規開拓において非常に効果的なアプローチ方法も存在します。

3.3.1 紹介(リファラル営業)

既存の顧客やパートナー企業、知人などから、新たな見込み客を紹介してもらう手法です。紹介者の信頼がベースにあるため、初対面から良好な関係を築きやすく、成約率が非常に高いのが最大の特徴です。

営業コストもほとんどかかりません。この手法を成功させるには、日頃から顧客と良好な関係を築き、満足度の高いサービスを提供し続けることが大前提となります。

また、どのような企業を紹介してほしいのかを明確に伝えたり、紹介してくれた方へのインセンティブ制度を設けたりすることも有効です。

3.3.2 展示会・イベント出展

自社の業界に関連する展示会やイベントに出展し、ブースを訪れた来場者と直接コミュニケーションをとる手法です。来場者は特定のテーマに関心や課題を持っているため、効率的に多くの見込み客と接点を持つことができます。

名刺交換を通じて一度に大量のリード情報を獲得できるほか、競合他社の動向を把握する良い機会にもなります。デメリットは、出展料やブース設営、人件費など、多額のコストがかかる点です。

出展効果を最大化するためには、事前の集客活動や当日の運営体制の構築、そして獲得した名刺情報に対する迅速なフォローアップが不可欠です。

4. 法人営業の新規開拓で成果を出すための成功のコツ5選

法人営業の新規開拓は、やみくもにアプローチしてもなかなか成果に結びつきません。市場環境が変化し、顧客の情報収集方法も多様化している現代においては、戦略的かつ体系的なアプローチが不可欠です。

ここでは、数々のアプローチ手法を成功に導くために共通して重要となる、5つの成功のコツを具体的に解説します。

これらのコツを意識することで、営業活動の質が向上し、成果につながる確率を飛躍的に高めることができるでしょう。

4.1 コツ1 最初の接触で売り込まず課題解決を意識する

新規開拓における最初の接触で最も避けるべきことは、自社の商品やサービスを一方的に売り込むことです。現代のビジネスパーソンは日々多くの情報に接しており、あからさまな売り込みに対しては強い警戒心を持っています。信頼関係が構築されていない段階での売り込みは、相手にシャッターを下ろさせてしまう最大の原因となります。

重要なのは、「自社の商品を売る」という意識から、「相手が抱える課題を理解し、その解決策を共に考えるパートナーになる」という意識へ転換することです。初回接触の目的は、契約やアポイントの獲得ではなく、まず相手の話をじっくりと聞き、信頼関係を築く第一歩と位置づけましょう。

具体的には、相手の事業内容や業界の動向について事前にリサーチした上で、「このような課題はお持ちではないでしょうか?」といった仮説に基づいた質問を投げかけ、ヒアリングに徹します。

相手にとって有益な情報(業界の最新トレンド、他社の成功事例など)を提供することで、「この担当者は自分たちのことをよく理解しようとしてくれている」と感じてもらうことが、次のステップへ進むための鍵となります。

4.2 コツ2 複数のアプローチ手法を組み合わせる

ターゲットとなる企業の業種や規模、担当者の役職や情報収集のスタイルは千差万別です。そのため、テレアポだけ、メールだけといった単一のアプローチ手法に固執すると、アプローチできる層が限定され、多くの機会損失を生んでしまいます。成果を最大化するためには、複数の手法を戦略的に組み合わせることが極めて重要です。

例えば、以下のような組み合わせが考えられます。

  • オンラインとオフラインの連携:展示会で名刺交換をした見込み客に対し、後日お礼のメールを送るだけでなく、課題解決に役立つオウンドメディアの記事やホワイトペーパーを案内する。
  • アウトバウンドとインバウンドの連携:フォーム営業で接点を持った企業に対し、すぐに商談を打診するのではなく、まずはウェビナーへ招待して自社の専門性を伝え、興味関心が高まった段階でインサイドセールスが電話でフォローする。
  • SNSの活用:一度接点を持ったものの商談に至らなかった担当者とLinkedInなどのビジネスSNSで繋がっておく。相手が関連する情報を投稿したタイミングや、人事異動のタイミングを捉えて再度アプローチする。

このように、各アプローチの長所を活かし、短所を補い合うように組み合わせることで、顧客との接点を多角的に確保し、継続的な関係性を構築することが可能になります。

4.3 コツ3 相手に合わせた情報提供を徹底する

「One to One」のアプローチは、新規開拓の成功率を左右する重要な要素です。誰にでも当てはまるような定型文のメールや画一的な提案資料は、多忙な担当者の目には留まりません。「これはまさに自社のための情報だ」と感じてもらうためには、相手の状況に合わせた徹底的なパーソナライズが不可欠です。

これを実現するためには、アプローチ前のリサーチが欠かせません。企業の公式ウェブサイトはもちろん、中期経営計画、プレスリリース、IR情報、採用情報、さらには担当者個人のSNSでの発信まで目を通し、相手が今何に注力し、どのような課題を抱えているかを深く理解します。

その上で、アプローチの際にはリサーチで得た情報を具体的に盛り込みます。「貴社の〇〇というプレスリリースを拝見しました。この新しい取り組みを進める上で、△△の領域で課題が生じる可能性があるかと存じます。実はその点において、弊社がお力添えできるかもしれません」といった形で、相手の文脈に寄り添ったコミュニケーションを心がけましょう。

また、現場の担当者には業務効率化の視点から、経営層には投資対効果(ROI)や事業戦略の視点から語るなど、相手の役職やミッションに合わせた訴求内容の使い分けも重要です。

4.4 コツ4 データを活用してPDCAを高速で回す

法人営業の新規開拓は、一度で成功する特効薬はありません。成功するためには、個人の勘や経験則だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいて営業活動を評価し、改善を繰り返すPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を高速で回す文化を組織に根付かせることが不可欠です。データを活用することで、営業活動は属人化から脱却し、再現性のある「勝ちパターン」を構築できます。

具体的に活用すべきデータとアクションは以下の通りです。

  • 活動量のデータ:架電数、メール送信数、商談数などの基本的な活動量を記録し、目標達成に必要な行動量を可視化します。
  • 成功率のデータ:アポイント獲得率、商談化率、受注率などを手法別・担当者別・ターゲット業種別などで分析します。これにより、どの手法が最も効果的か、どのようなターゲットにアプローチすべきかといった戦略的な意思決定が可能になります。
  • 顧客に関するデータ:SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)ツールを活用し、受注に至った企業の共通点(業種、規模、抱えていた課題など)や、失注した理由を分析します。この分析結果は、ターゲティング精度の向上や提案内容の改善に直結します。

例えば、「メールの件名をAパターンとBパターンで1週間ずつ試し、開封率が高い方を標準フォーマットにする」といった小さなA/Bテストを繰り返すだけでも、活動全体の効率は着実に向上していきます。定期的な振り返りの場を設け、データを基に次のアクションプランを立てる習慣をつけましょう。

4.5 コツ5 継続するための仕組みを構築する

新規開拓は、すぐに結果が出ないことも多い、忍耐力が必要な活動です。そのため、営業担当者個人のモチベーションや能力だけに依存する体制では、いずれ疲弊し、活動が途絶えてしまいます。組織として新規開拓を継続し、安定的に成果を出し続けるためには、活動を支える「仕組み」の構築が欠かせません。

構築すべき仕組みの代表例は以下の通りです。

  • 情報共有の仕組み:SFAやCRMを導入し、顧客情報、アプローチ履歴、商談の進捗状況、成功事例や失敗談といったあらゆる情報をチーム全体でリアルタイムに共有します。これにより、担当者不在時のフォローがスムーズになるだけでなく、組織全体にノウハウが蓄積され、営業力の底上げにつながります。
  • 役割分担の仕組み:見込み客の獲得(マーケティング)、アポイント獲得(インサイドセールス)、商談・クロージング(フィールドセールス)といった形で役割を分担する「The Model」型の組織体制を構築することも有効です。各担当者が自身のミッションに集中することで、専門性が高まり、プロセス全体の効率が向上します。
  • 標準化の仕組み:成果を上げている営業担当者のトークスクリプトや提案資料、メールの文面などをテンプレート化し、チームの標準(ベストプラクティス)として共有します。これにより、営業担当者間の質のばらつきをなくし、新人も早期に戦力化することが可能になります。

これらの仕組みは、個人の頑張りを組織の力に変え、持続可能な新規開拓活動を実現するための土台となります。

5. 法人営業の新規開拓を効率化する生成AI活用

法人営業の新規開拓は、多くの時間と労力を要する活動です。しかし、現代ではテクノロジーの進化により、これらのプロセスを大幅に効率化し、より質の高い営業活動に集中することが可能になりました。

ここでは、新規開拓を効率化するための生成AIの活用方法をご紹介します。

5.1 営業メール・手紙の文面作成

生成AIを活用すれば、ターゲット企業の業種や事業内容、最近のニュースリリースなどを踏まえた、パーソナライズされた営業メールや手紙の文面を短時間で作成できます。

例えば、「〇〇業界で△△という課題を抱えている企業向けの、弊社サービス□□を提案するメール文面を作成して」といった指示を与えるだけで、質の高い草案を複数パターン生成してくれます。

これにより、一斉送信のような画一的なアプローチから脱却し、一社一社に響くメッセージを効率的に届けることが可能になります。

5.2 営業トークスクリプトの作成

テレアポやオンライン商談で使用するトークスクリプトの作成にも、生成AIは役立ちます。想定される顧客の役職や課題、考えられる反論などをインプットすることで、状況に応じた説得力のある会話の流れや切り返しトークを組み立てることができます。

新人営業担当者の育成や、営業チーム全体でのトーク品質の標準化にも貢献します。

5.3 ターゲット企業のリサーチ補助

アプローチ前の企業リサーチは重要ですが、時間がかかる作業です。生成AIにターゲット企業のウェブサイトのURLや決算資料を読み込ませ、「この企業の主な事業内容と最近の動向、考えられる課題を要約して」と指示すれば、膨大な情報からアプローチの切り口となるポイントを瞬時に抽出できます。

これにより、リサーチ時間を大幅に短縮し、より戦略的な仮説立案に時間を費やすことができます。

5.4 商談後の議事録作成・要約

商談の録音データを生成AIに入力することで、自動で文字起こしを行い、さらにはその内容を要約して決定事項や次のアクションをリストアップさせることができます。これにより、議事録作成という煩雑な作業から解放され、営業担当者は次の商談準備や顧客フォローに迅速に取り掛かることができます。

「ChatGPT」や「Gemini」、「Microsoft Copilot」といったツールが代表的ですが、活用する際は、生成された内容を鵜呑みにせず、必ず人の目でファクトチェックや微修正を行うことが重要です。

また、機密情報の取り扱いには細心の注意を払い、各サービスの利用規約やセキュリティポリシーを遵守する必要があります。

6. まとめ

法人営業の新規開拓は、企業の成長に不可欠ですが、成果が出ずに悩む担当者の方も少なくありません。新規開拓が難しいのは、ターゲット設定などの事前準備が不十分であったり、自社に合わない非効率なアプローチを続けていたりすることが主な原因です。

本記事でご紹介したように、まずは顧客像を明確にし、複数のアプローチ手法を組み合わせてPDCAを回すことが成功への近道です。ぜひ明日からの営業活動に活かし、継続的な成果に繋げてください。