最近、ひらかた診断士の活動を通じで、農業や農家さんと接する機会が多くなってきました。今まで、接する機会が少ない業界でしたので、何か勉強をする方法がないかと探している中で「農業経営アドバイザー」のことを知りました。

ひらかた診断士の活動は以下のURLを参考にしてください。
https://axia-partner.com/category/hirakata

「農業経営アドバイザー」は、日本政策金融公庫が認定する民間資格になりますが、試験の難易度や合格率、取得後の具体的なメリットなど、公開されている少し情報が少なかったため、自分の情報整理のために記事としてまとめています。

本記事では、「農業経営アドバイザー」の仕事内容から試験の概要、勉強法、そして資格取得後の話など、私が調べた情報を網羅的に解説します。私自身が資格を受験するかは、まだ不明ですが、皆様のお役に立てたら幸いです。

1. 農業経営アドバイザーとは 農業の未来を支える専門家

農業経営アドバイザー制度は、「農業の特性を理解している専門家」からアドバイスを受けたいという要望を受けて、平成17年2月に創設されました。

国内の農業は、後継者不足や高齢化、担い手への農地集約、さらには気候変動への対応やスマート農業の導入など、数多くの課題に直面しています。このような変化の時代において、幅広い要望に専門的かつ柔軟に対応して、農業を支援することが求められています。

「農業経営アドバイザー」合格者は6,000名超となっております。受験資格が限られている試験ですので、そこまで多くはない印象ですが、着々と増加しています。

1.1 日本政策金融公庫が認定する制度

「農業経営アドバイザー」は、政府系金融機関である日本政策金融公庫が試験を実施し、認定する資格です。この資格は、農業経営者に対する経営改善支援に必要なノウハウを有する人材育成を通じて、日本の農業経営の発展に寄与する目的として創設されています。

制度の運営は、外部の「NPO法人日本プロ農業総合支援機構:J-PAO」に委託されているようです。

日本政策公庫の該当ページ:https://www.jfc.go.jp/n/adviser/council/reference.html

J-PAOの該当ページ:https://www.j-pao.jp/about_nougyoadvisor/

1.2 農業経営アドバイザーの主な役割と活動事例

「農業経営アドバイザー」の仕事は多岐にわたりますが、その中心は農業経営者が抱える経営上の課題を解決に導くことです。主な役割と活動事例は以下の通りです。

  • 融資から事業再生支援までの経営相談
  • マッチングによる販路拡大
  • M&Aや事業承継の課題解決策の提供
  • スマート農業技術の導入
  • 経営診断や各種計画作成
  • 法人化支援
  • 組織体制の改善
  • インボイス制度の周知、助言
  • 経営全体への伴走型支援

更に詳しい活用事例はこちら:https://www.jfc.go.jp/n/adviser/pdf/advisors_20211101.pdf

このように、「農業経営アドバイザー」は経営のあらゆる側面から農業者を支え、その成長と発展に貢献する重要な役割を担っています。

1.3 農業経理士との違い

農業分野の専門家として、「農業経営アドバイザー」とは異なり、「農業経理士」という認定制度もあります。これは、一般財団法人日本ビジネス技能検定協会が運営していて、農業簿記で培った知識を基盤としながら、農業経営の現場で必要となる実践的なスキルを習得した人を、認定する制度になっています。

同じ農業に関わる認定資格という面では同じですが、「農業経理士」は農業簿記1級、農業税務、経営管理の3つの試験に合格して認定される制度になっているため、農業に関わる経営管理やお金の面でのエキスパートのように感じています。

一方、「農業経営アドバイザー」は、農業簿記、農業税務、経営管理の分野は試験範囲に入っていますが、加えて農業・農村構造と農業政策、農地制度・農地所有適格法人、労務管理、農業マーケティングがあるため、農業に関わる総合的な窓口役のように感じています。

但し、「農業経理士」に受験資格はなく(どなたでも可)、テキストや問題集、過去問の公開もありますので、学習がしやすい環境は整っています。

2. 農業経営アドバイザー試験の全体像

「農業経営アドバイザー」を取得するためには、日本政策金融公庫が実施する試験に合格する必要があります。ここでは、試験の概要から科目、出題範囲まで、受験を検討する上でまず知っておくべき試験の全体像を詳しく解説します。

2.1 試験の実施概要と年間スケジュール

農業経営アドバイザー試験は、例年1年に1回実施されています。まずは、試験の基本的な情報と、申し込みから合格発表までの大まかな流れを把握しておきましょう。

試験は、CBT(Computer Based Testing)方式のみで実施されます。過去はレポートや、面接があった時代もあったようですが、現在は変わっております。会場は株式会社シー・ビー・ティ・ソリューションズが管理する会場から選択します。全国にあるので、近くの会場を選択することができます。

株式会社シー・ビー・ティ・ソリューションズの会場:https://cbt-s.com/examinee/testcenter/?type=cbt

受験料は、試験科目による変動しますが、以下の通りになります。4科目受験は公認会計士か税理士資格が必要ですので、それ以外の方は6科目受験となります。再受験で特定科目のみ受験する場合は、1科目の金額になります。

6科目受験:45,000円(税込)
4科目受験:35,000円(税込)
1科目受験:15,000円(税込)

年間のスケジュールは、おおよそ次の流れで進みます。まず、7月頃に試験の実施要領が公表され、同時に受験申込の受付が開始されます。申込期間は8月末頃まで続くのが通例です。そして、試験本番は10月末~11月頭に受験をします。

2.2 受験資格と対象者

「農業経営アドバイザー」は、日本政策公庫の本支店と連携して、農業経営者に対するご支援を行うことができる税理士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関職員、その他関係機関・団体職員等が、対象者になっていて、一般の方を対象としていません。

「自己の業務において、農業経営者に対するご支援が想定されない方は受験できません」となっているため、あくまで実際の現場で動くことを想定できる方向けの資格となります。

2.3 試験科目と出題範囲の詳細

試験は、全部で6科目となっていて、公認会計士か税理士資格がある方は4科目が必須となります。農業経営を多角的にサポートするための知識が広く問われるため。各科目の出題範囲を理解し、的を絞った学習計画を立てることが合格への鍵となります。

〇6科目:計140分
(1)「農業・農村構造と農業政策」
(2)「農地制度・農地所有適格法人」
(3)「労務管理」
(4)「農業簿記・農業税務」
(5)「農業経営診断・改善の進め方」
(6)「農業マーケティング」

〇4科目:計70分
(1)「農業・農村構造と農業政策」
(2)「農地制度・農地所有適格法人」
(3)「労務管理」
(4)「農業マーケティング」

3. 気になる農業経営アドバイザー試験の難易度と合格率

農業経営アドバイザー資格の取得を検討する上で、気になるのが試験の難易度です。資格の対策を考えて、学習計画を立てるためにも、合格率や必要な勉強時間を把握しておくことは重要です。

ここでは、過去のデータや他の資格との比較を通じて、農業経営アドバイザー試験の難易度を具体的に解説します。

3.1 過去の合格率の推移から見る難易度

農業経営アドバイザー試験の難易度を客観的に測る指標として、まずは過去の合格率を見ていきます。
日本政策金融公庫が公開している合格者推移を見ていくと、年代によってだいぶブレがあるものの、2割~3割程度が合格する難易度になっています。

しかし、この試験の受験者は、、税理士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関の職員、JA職員、農業コンサルタントなど、既に一定レベルの金融や経営、税務に関する専門知識を持っている層が中心です。こうした専門知識を持つ受験者が多い中での合格率が3割程度であるという点を考慮すると、決して簡単な試験ではないのだと感じます。

農業特有の論点は、少し馴染みのないことも多いと思いますので、農業に関わる幅広い分野について、しっかりとした試験対策が求められると理解しておくのが良いと思います。

3.2 合格に必要な勉強時間の目安

「農業経営アドバイザー」の試験合格に必要な勉強時間は、あまり情報がないので何とも判断が難しい状況です。しかし、事前に研修動画が配信される期間が約約2ヶ月であることをベースに、事前学習を1~2ヶ月だと仮定すると、ザックリ100~300時間あたりが目安になる計算です。

ただし、この勉強時間はあくまで目安であり、受験者一人ひとりが持つ前提知識によって大きく異なります。農業分野の知識が全くない方や、法律・労務に関する学習経験がない方は、基礎から学ぶ必要があるため、目安よりも多くの時間が必要になると思いますので、自分の得意分野と不得意分野を把握した上で、余裕を持った学習スケジュールを立てることが合格への鍵となりそうです。

3.3 他の金融・経営系資格との難易度比較

「農業経営アドバイザー」の難易度を他の資格と比較することで、その位置づけをより具体的にイメージできます。関連性の高い金融・経営系の資格と比べてみましょう。

まず、経営コンサルタント唯一の国家資格である「中小企業診断士」と比較すると、中小企業診断士には1,000時間程度は必要と言われているため、農業経営アドバイザーのほうが対策がしやすいと思います。
また試験科目が免除される会計士の場合は2,500~5,000時間、税理士の場合は2,000~4,000時間と、勉強時間に大きな開きがあります。

次に、金融知識を問う「FP(ファイナンシャル・プランニング)技能士2級」や、会計の基礎知識を証明する「日商簿記2級」と比較すると、FP2級の場合は150~300時間、簿記2級の場合は200~350時間と、似通った勉強時間になっています。

単純に勉強時間だけが難易度を表しているわけではないですが、凡そのイメージとしては大きく外れていないと思います。

3.4 独学は可能か 具体的な勉強方法

「農業経営アドバイザー」試験は、一般的な予備校などで対策講座を行っていないため、基本的には独学での勉強になります。公式テキスト、問題集、過去問題の公開もないため、学習のメインは参考図書による事前学習と、研修動画を活用していきます。

参考図書:https://www.jfc.go.jp/n/adviser/pdf/training_test_info250618c.pdf

昨年は一般社団法人農業経営支援センターで受験対策講座を行っていたようですので、今年も講座の募集があるかもしれませんので、興味がある方は確認してみてください。

一般社団法人農業経営支援センター:https://nougyou-shien-kanto.jimdofree.com/%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E7%B5%8C%E5%96%B6%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%BC%E8%A9%A6%E9%A8%93%E5%AF%BE%E7%AD%96%E8%AC%9B%E5%BA%A7/

5. 農業経営アドバイザー資格を取得するメリット

農業経営アドバイザーの資格取得は、単に知識が身につくだけでなく、どのようなメリットがあるかを整理してみます。

5.1 農業経営に関する専門知識の証明になる

農業経営アドバイザーは、日本政策金融公庫が認定する資格です。そのため、この資格を保有していることは、農業経営に関する体系的な専門知識を持っていることの証明となります。

具体的には、財務分析や税務、労務管理、マーケティング戦略、さらには事業承継や法人化といった、農業経営者が直面する多岐にわたる課題に対応できるスキルセットをアピールできます。

特に、農業特有の会計処理や補助金制度、関連法規など、一般的な経営知識だけではカバーしきれない分野に精通している専門家として、自身の価値を明確に示せるようになります。特に、会計士、税理士、中小企業診断士とは、資格の相性も良いと思います。

5.2 農業関連のネットワークを構築できる

資格取得後に、日本公庫支店が事務局となり運営している「農業経営アドバイザー連絡協議会」に、加入することができます(同意した方のみ)。連携協議会では以下の内容を実施していますので、同じ資格を持つ多様な専門家と出会う機会や、農業経営者と出会う機会がある可能性があります。

  • 県法人協会等におけるアドバイザー情報提供の仲介
  • 都道府県の法人化推進体制の窓口
  • 農政局・県庁から法人推進政策等についての情報交換
  • 管内アドバイザー間の連携強化
  • 農業者からの照会に対し、条件に合致するアドバイザーリストの提供
  • 公庫業務におけるアドバイザーとの連携
  • アドバイザーを活用した担い手農業者の法人化や経営力向上を支援する体制の強化

このような場で築かれる人脈は、非常に価値のある財産となります。最新の農業政策や技術動向、各地の成功事例といった有益な情報を交換できるだけでなく、異なる専門性を持つメンバーと連携することで、一人では解決が難しい複雑な課題にも対応できるようになります。

5.3 金融機関やコンサル業界への就職・転職で有利になる

農業は日本の基幹産業であると同時に、スマート農業や6次産業化など新たなビジネスが生まれる成長産業でもあります。

そのため、農業分野の知見を持つ人材への需要は、金融機関やコンサルティング業界において年々高まっていると考えます。特に、農業者への融資を積極的に行う日本政策金融公庫やJAバンク、地方銀行などでは、農業経営の実態を深く理解し、事業性を正しく評価できる人材が強く求められています。

農業経営アドバイザー資格は、その能力を客観的に証明する強力な武器となり、採用選考においてなアピールポイントになることが考えられます。但し、この資格がないとできない業務があるわけではないので、アピールの程度は、注意が必要に思います。

6. 農業経営アドバイザー資格取得後の更新

農業経営アドバイザーの資格は、取得して終わりではありません。「農業経営アドバイザー」を維持するためには、5年に1回の更新が必要となります。またさらに上級資格となる「上級経営アドバイザー」制度もありますので、こちらを整理していきます。

6.1 資格の更新制度について

「農業経営アドバイザー」は、合格日から起算して5年を経過した日の属する年度の年度末までが有効期限となります。手続きの内容を見ていると、資格を取っただけで何も活動していない方にとっては、少し面倒な内容になっていると感じます。

更新には、①農業経営アドバイザーミーティングへの参加、②更新審査料は10,000円(税込)③活動実績報告とレポートが必要になります。農業経営アドバイザーミーティングは、スキルアップを目的に年1回実施していて、オンデマンド配信されるため遠方でも参加は難しくなさそうです。

活動実績は、5年間の活動実績を最低1件、最大10件報告する必要がります。またレポートは、アドバイザーとしてのこれまでの活動成果もしくは活動の抱負を1,200文字以上2,000文字以内で報告する必要があります。

6.2 上級農業経営アドバイザーについて

「上級農業経営アドバイザー」は、農業経営アドバイザーの上級資格として平成23年に日本公庫が創設しています。農業経営アドバイザーのうち、十分な経験を有し、難易度の高い経営課題に対して実践的なアドバイスが可能かつ活動歴が3年以上の者を受験対象としています。

累計の合格者が123名(農業経営アドバイザーは6,678名)であることを見ると、狭き門になっています。

試験の流れを見ると、以下の選考があるようですが、その詳細を見ることは難しかったので、「農業経営アドバイザー」取得後に、情報を整理していくしかないのだと思っています。

〇1次選考
 ・志望動機
 ・略歴(最大10件)
 ・活動実績(最大10件)
 ・農業経営アドバイザー活動に関するレポート(2件)

〇2次選考
 ・論述試験
 ・面接試験

7. まとめ

今回は、農業経営アドバイザーの役割から試験の難易度、合格後のメリットまで詳しくご紹介しました。農業経営の高度化が求められる現代において、専門知識を持つアドバイザーの重要性はますます高まっています。

試験は決して簡単ではないと思いますが、計画的な学習で合格を目指すことは十分に可能だと考えますので、農業分野での活動を広げるためには、資格取得を考えてもよいと思います。