営業の現場では、顧客から有益な情報を引き出すことが重要です。特に法人営業では、顧客課題も見えづらいことが多く、量の面でも質の面でも適切に情報を集めることが必要になります。

しかし、時代の流れに合わせて営業スタイルは変わってきていますが、このヒアリングの領域では表面的な課題しか聞けないという状況に直面しています。

本記事では、ヒアリング力を高めるために、どうしたらよいかを考えていきます。具体的なスキルやテクニックだけに留まらず、より深いヒアリングができる汎用的な考え方を整理していきます。

1. 営業スタイルの変化

ビジネス環境の変化や、顧客ニーズの変化に応じて、営業担当に求められるものが変わるため、時代の流れと共に営業スタイルは変わってきました。

プロダクト営業

私が知る限りですが、一番ベーシックなスタイルになります。

特定の商品やサービスを販売する営業スタイルで、製品そのものの機能や特長を強調して説明し、顧客に売り込むことが求められます。

物がない時代を背景に、効率的に市場に投入することが求められ、機能がよくなることや性能が上がることが、顧客価値に直結していた状況になります。

ソリューション営業

私が営業していた時代に、よく言われていたスタイルになります。

顧客の課題やニーズを理解し、それに対する解決策として自社の製品やサービスを提供する営業スタイルで、単なる製品販売から一歩進んだアプローチが求められます。

顧客の要求が細分化、複雑化する中で、単純な機能改善や性能が上がることが、イコール顧客価値になりづらくなってきた背景があります。

コンサルティング営業

ソリューション営業から、更に一歩進んだスタイルになります。

コンサルタントのように顧客に寄り添い、深くヒアリングし、顧客のビジネス成長に貢献する提案を行う営業スタイルで、自社の製品/サービスの説明ではなく、それをどう活用して効果を最大限得られるかまで、アプローチすることが求められます。

ビジネス環境がますます競争的になり、単なる販売ではなく、顧客との長期的な関係構築が重要視されるようになった背景があります。

インバウンド営業

IT技術の進化によって、新しく生まれたスタイルになります。

顧客からの問い合わせやオンラインでの情報検索を基に営業活動を行うスタイルで、マーケティングと連携し、顧客に自らアプローチさせる形で営業を行います。インサイドセールスである程度まで会話をし、リアルな営業活動へ受け渡してクロージングを行う流れになります。

インターネットやデジタルマーケティングの普及により、顧客が自己主導で情報を得るようになり、このスタイルが広まった背景があります。またWEB会議が一般化したこともあり、対面営業の機会が減ったことで、よりデジタル経由で営業活動をすることが求められています。

その他の営業スタイル

これ以外でも、顧客の希望や要望を聞いて徹底的に対応していく御用聞き営業、技術者が営業活動に参画して技術的な課題を即時解決できるようにした技術営業、顧客が気付いていない潜在的課題について発見/整理しその解決策を提示するインサイト営業など、細かく分類をしていくと、まだまだ多くの種類があります。

またこれから技術の進歩や、顧客要望の変化に合わせて新しいものが出てくるかもしれませんが、共通して求められていることは、大きく変わらないと思っています。

共通して求められること

時代と共に細かい部分で求められることは変わっても、本質的には変わっていない部分があると考えています。

それは「顧客の求めるものを捉えて、要望にかなうものを販売する」ことです。

当たり前ですが、顧客が求めているから購入してくれるわけで、これは時代が変わっても変化していません。

となると、一番重要になるのは、顧客が求めるものが何なのかを適切に捉えるために、要望や課題をヒアリングする力になります。ここが違っていると、その後に何をどんな形で提案しても購入に至ることは難しくなります。

2. なぜ表面的な課題しか聞けないのか?

適切なソリューションを提案するためには、ヒアリングを通じて顧客の要望や課題を捉えることが必要になりますが、多くの営業担当者は表面的な質問にとどまり、顧客の本質的な課題を見逃してしまうことがあります。

表面的な情報しか引き出せない原因の一つは、①営業担当者が顧客との信頼関係を十分に築けていないことや、②そもそも深く聞けていないことがあります。

営業への信頼が不足していると、顧客も、自身の課題を率直に話すことは少なくなり、表面的な話が多くなります。この状況では、まずは人間関係の構築を優先して、信頼関係ができてきてから、深堀していくことが求められます。

また、営業側が深く聞けていない課題では、「何か要望はないですか?」「何か課題はないですか?」と、直接的な質問をぶつけて、その回答を顧客が言ったこととして絶対視してしまうことがあります。

顧客からでている表面的な話が悪いわけではないですが、表面的な話は抽象度も高く、ここに解決策を示していっても、顧客に刺さることは少なく、話が進まなくて終わってしまうことが多くあります。

3. ヒアリング力を高めるための技術

では、深くお客様要望や課題をヒアリングするために、覚えておきたいスキルや考え方を整理していきます。

アクティブリスニング(積極的傾聴)

アクティブリスニングとは、単に顧客の話を聞くだけでなく、相手の言葉に耳を傾け、理解しようとする姿勢を示すことです。顧客の話に対して適切に反応し、確認の質問を挟むことで、顧客は自分の意見や感情が尊重されていると感じ、より多くの情報を提供してくれるようになります。

具体的には、このような理解であっていますか?と確認したり、そのお話だとこんなことが起きないですか?など聞いたりと、顧客の話を理解しながら質問をし、必要な情報を得ていくことができます。

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン

質問の投げかけ方にも種類があり、使い分けると効果的です。

オープンエンド質問とは、顧客が自由に回答できる質問形式のことです。例えば、「今期のテーマで最も大きな課題は何ですか?」といった質問は、顧客が詳細に話をするきっかけになり、話を広げていくときに活用できます。

一方、クローズドエンド質問は「はい」か「いいえ」で答えられる、またはAかBか選択して答えられる質問形式のことです。例えば、「今期のテーマで課題はありますか?」といった質問は、話を整理したり収束されていくときに活用できます。

状況に応じて、使い分けることで、ヒアリングの質を高めることができますが、注意点としては、あれこれと質問をしすぎて相手を困らせないように配慮する必要があります。

パラフレーズ(言い換え)

パラフレーズとは、顧客の発言を自分の言葉で言い換えて確認する技術です。これにより、顧客が伝えたいことを正確に理解しているかどうかを確認でき、また顧客自身も自分の考えを整理する助けになります。

例えば、「つまり、〇〇ということでしょうか?」といった具合に、パラフレーズを効果的に使うことで、コミュニケーションがより深まりますし、アクティブリスニングにもつなげていくことができます。

状況質問、問題質問、示唆質問、結論質問の活用法(SPIN)

SPINテクニックは、営業ヒアリングにおける効果的な質問法の一つです。

状況質問(Situation)、問題質問(Problem)、示唆質問(Implication)、結論質問(Need-payoff)の4つのステップを順に進めることで、顧客の状況を理解し、課題や潜在的なニーズを明確にし、その影響を探り、最終的な解決策を引き出します。

顧客の課題に深く切りこむことができ、顧客が認識していなかった課題にたどり着くことができると、この後の提案も他社より優位的な立ち位置でスムーズに進めることができます。

非言語コミュニケーション

ヒアリングにおいては、言語的な部分だけはなく、非言語的なコミュニケーションも重要です。目線、表情、姿勢などを通じて、相手に対する関心や理解を示すことができます。これにより、顧客は安心感を抱き、自分の課題を率直に話しやすくなります。

4. まとめ

ヒアリング力は、手法や技術を知ることからスタートし、自分のものにするために反復的な練習やトレーニングが必要になります。また会話や質問のパターンを持っておくことも有効になりますので、具体的に何と言って聞いているのか?など、チームで共有していくことも有効です。

会社ではわかりやすい結果しか見られず、営業の現場はブラックボックスになりがちなので、悩みやノウハウを共有する機会は少ないと思いますが、他人を知ることも重要ですので、是非一度、お試しください。