企業向けにビジネスをしているお客様において、営業活動に課題を感じている会社は多くあると思います。特に主要な取引先からの売上が減少して、新たに営業活動をしようとしても、なかなかうまく進めないケースがあります。

中小企業では、属人化してブラックボックスになりがちな法人営業の現場から、よく聞く課題感を整理し、成功へのきっかけをまとめてみたいと思います。

1.法人営業(BtoB営業)の特徴

法人営業には、個人向け営業(BtoC営業)と違った、いくつかの特徴があります。

1.1 ターゲット

法人営業のターゲットは、法人や組織である企業が主となり、ターゲットとなる企業の規模や業界、企業風土などを理解した上でアプローチする必要があります。例えば、内部の意思決定プロセスが複雑な大企業や、特定の業種に特化した中小企業、それぞれに適した営業手法を使い分けることが求められます。

また個人向けでは窓口、決定者、利用者が、同一個人になりますが、法人営業では、キーマンになる人を見つけて、集中的にアプローチすることも必要になります。

1.2 意思決定プロセス

法人営業において、意思決定プロセスは複数のステークホルダーが関与することがほとんどです。営業担当者は関係各所とコミュニケーションを取りながら、各ステークホルダーのニーズや懸念、役割や検討範囲を見極めながら、適切に対応する必要があります。

例えば、購買担当者はコストパフォーマンスを重視し、技術担当者は製品の機能や品質に関心があります。また、経営層は投資対効果を重視するため、それぞれに対するアプローチ方法を工夫することが重要です。

1.3 取引の時間

法人営業の取引は、長期間で複数回にわたることが一般的です。契約成立までのリードタイムが長く、初回接触から商談成立まで数ヶ月や、予算確保も加味すると受注までに1年以上かかることもあり、プロジェクト管理や進捗管理の基盤が重要になります。

また、継続的な取引関係が前提になることが多いため、定期的なフォローアップや情報提供などで、関係性の構築が欠かせません。

1.4成果の計測と改善

法人営業の成功は、正確な成果計測とそれに基づく継続的な改善によって支えられます。単純な売上高や受注件数だけでなく、商談数、訪問回数、顧客満足度など、複数の要素が総合的に関わった結果として受注につながります。

活動を定期的に評価して見直す必要がありますが、業界や扱っているもので重要になる要素に違いが出てきますので、どこに重点ポイントとしてKPI/管理数値とするかを検討する必要があります。

またあれこれとKPI/管理数値を作って、KPI/管理数値同士が衝突(あっちを追うとこっちが追えない状態)して、現場の活動や判断を惑わせないように注意する必要があります。

2.現場でよく聞く課題感

法人営業(BtoB営業)の現場でよく聞く課題感を、整理してみます。

2.1戦略や方向性がない

法人営業において、明確な営業戦略や方向性が定まっていないことは大きな課題です。
課題感として、以下のような声がよくあります。

・攻めるべき市場/顧客と、優先度を下げる市場・顧客の区別ができていない
・どの商材に注力するか、現場任せになっている
・目的の見えない施策(という名の号令)が多すぎる

企業が複数の製品やサービスを提供している場合、それぞれのターゲット市場や攻略したい市場/顧客に合わせた専門的な戦略が必要です。

営業部隊の人的リソースにも限界があるので、特に「やらないこと」「優先度を下げること」を決めながら、効果的なアプローチを実現していく必要があります。

2.2現状把握があいまい

自社の営業状況を正確に把握することは、多くの法人営業チームが直面する課題です。
課題感として、以下のような声がよくあります。

・商品別や顧客別の売上/利益が把握できていない
・将来的な売上の見通しやリスクが見えていない
・報告用の数値とりまとめに時間を要している

具体的な現状把握ができなければ、効果的な戦略や改善施策を打ち立てることができません。単純な売上/原価/利益でも、全体をまとめた数字しかなかったり、取りまとめに時間がかかって共有されるのが遅かったりします。

また法人営業は、引合から受注までに時間がかかる特徴があるので、足元の数値/状況だけではなく、少し先の状況や数値を把握して、適切に対策をしていく必要があります。

2.3業務の切り分けが不透明

法人営業では、業務を適切に切り分けることが求められます。
課題感として、以下のような声がよくあります。

・営業職が事務職の仕事を多くしてしまっている
・事務作業が多く顧客接点時間が少ない
・システムが連携しておらず、二重入力やダブルチャック等の負荷が重い
・見積書/契約書/注文書/請求書など、ペーパーレス化されていない

全ての業務を一人でこなそうとすると、効率が低下し、重要な業務に十分な時間をかけられないので、適切に役割分担をする必要があります。本来営業は顧客接点や顧客対応の時間が多くなるべきですが、社内の事務処理が多くては本末転倒になってしまいます。

また中途半端なシステム化が余計な業務を増やしたり、逆にIT化ができずに紙の業務が残ったり、適切にデジタル技術を活用していくことが必要になります。

2.4コミュニケーション不足

法人営業チーム内のコミュニケーション不足は、情報の行き違いや二重業務などの問題を引き起こします。
課題感として、以下のような声がよくあります。

・顧客ニーズを製品部門や技術部門と共有できていない
・顧客対応が属人化で、ノウハウ共有の取り組みが進まない
・報連相の文化がない
・現場の把握ができていないので、感覚的/精神的な指示/指導しかできない
・製品/在庫/物流等のい合わせに時間を要している

企業活動の多くは、部門や担当者との共有/連携など、人と人とのコミュニケーションが重要になります。効果的なコミュニケーションがなければ、会社全体のパフォーマンスは低下します。

定期的な場だけでなく、不定期なものをどうするかがポイントで、どんな情報を、どのタイミングで、誰に連携するかなど、ルールというより文化として根付かせていくレベルで整理を行っていく必要があります。

2.5人材不足

優秀な人材を確保することは、法人営業においてもとても重要です。
課題感として、以下のような声がよくあります。

・業界や商材ごとにノウハウが必要
・評価制度が実業務に見合っていない
・人の入れ替わりが激しく、情報/ノウハウが引き継がれない

日本において、人材の確保はますます難しくなっていますので、どうやって人材を確保するかを考える必要があります。優秀な人を採用するハードルも高いですが、採用できたとしても定着しないと、結果として手間だけかかって何も変わるとはありません。

単純に給料や報酬を上げる対応では限界がありますので、人材を確保して定着してもらうための環境整備も必要になります。特に最近では、やりがいや成長を感じることが大事になってきていますので、待遇面以外での環境も意識的に瀬日する必要があります。

成功へのアプローチ

これらの課題を解決するためには「ITの活用」が重要な手段となり、一般的に言われるPDCAのサイクルを適切に回す環境を整えることが、基本的ですが一番大事だと考えます。

そもそも営業活動になると、受注か売上のみで判断し、そのプロセスを見て評価や改善を行う機会が、そんなに多くないように思います。それでも、数値状況がいいときはいいのですが、景況感が悪くなると、プロセスの何をどうして数値の回復を目指すのかが考えられないため、精神論的な「頑張ろう」か、「全体をローラー」しか案が出てこなくなってしまいます。

これでは現場もかわいそうですので、普段から活動を分解して整理し、重要なKPI/管理数値を適切に設定/管理し、定期的な振り返りと改善の活動を回していくことが、営業活動の強い基盤になると考えます。

まとめ

法人営業の現場で何も課題感がなく、順風満帆という企業はとても少ないと考えます。皆さんどこかに悩みを抱えながら、日々の活動を行っていると思います。

今後、このブログを通じて、お悩みを解決するために有効な情報を発信し続けられるように、PDCAサイクルを回していこうと思いますので、今後ともよろしくお願いします。